津本朋子

毎年、酷暑の季節には熱中症でお年寄りが亡くなるという、痛ましいニュースに触れる。しかし、真夏だけが危険なわけではない。むしろ、家庭内での事故死という観点で見れば、冬を中心に起こる風呂場での溺死事故の方がはるかに多い。冷えきった体をいきなり熱い風呂に沈めることによって、急激な寒暖の差にさらされ、心筋梗塞や脳卒中を引き起こしてしまうのだ。 厚生労働省の人口動態統計によると、2012年に溺死事故で亡くなった人の数は、およそ5600人。しかし、実際にはこの3倍にあたる1万9000人が亡くなっている。 というのも、事故死ということになれば検視を受けなければならないため、多くの遺族が病死扱いを望み、統計上に人数が反映されないのだ。 一方、警察の取り締まり強化により、12年の交通事故死は4411人にまで減少した。つまり、風呂場で亡くなる人の数は、交通事故の死者の4倍にも上るのだ。